相間電圧がアンバランス

空調熱源プラントに供給される電源に問題が!


大規模増設工事で、屋上に空調の熱源プラントが増設される工事に携わっていました。私たちは空調設備の工事を請け負っており、主電源は別の会社が施工していました。

 

既存の電気室は1階ですが、この新たに作られた空調熱源プラントは、12階の屋上に計画されていました。別の電気工事会社は、1階より主電源ケーブルを延々と配線し、空調熱源盤に接続していました。

 

この空調熱源プラントには、ターボ冷凍機が3台設置されており、電気負荷の合計は 800~1,000kWもありましたが、電源は低圧(400V3相)で供給のため、3相ケーブルでは太くなりすぎる為、各相はシングルケーブルを複数本使われていました。

 

 

工事は完成間際となり 空調システムの試運転が始まったのですが、冷凍機に負荷をかけていくにつれ相間の電圧が、アンバランスになり「冷凍機のモータが損傷する恐れがある」と、冷凍機のメーカが、試運転を中止してしまいました。

 

電気負荷がかかっていないときは、相間電圧のアンバランスが微少なため、試運転時までこの問題が分かりませんでした。電気を施工した会社にこの問題を提起し調査依頼をしたのですが、「冷凍機のモーターが不良なのでは」となかなか対応してもれえませんでした。

 

ようやく重い腰を上げて調査開始となり、ケーブル周囲に発生する磁界が原因で、アンバランスが発生したようです。 電気負荷が少ないときは磁界も弱くアンバランスが僅かで、気が付かなかったようです。

 

3相ケーブルやバスダクトが使われた配電ならば、これほど大きなアンバランスは生じなかったのですが、各相にシングルケーブルが複数使われており、その配置が良くなく大きなアンバランスが生じたようです。

 

各相に3本のケーブルが使われる時、図-1では整然と配置され施工もきれいですが、ケーブルに生じる磁界が相互に打ち消し合わず、相間電圧がアンバランスになります。 図-2では各相のシングルケーブルが俵状に積み重ねられている為、3相ケーブルのように磁界も打ち消しあい 、正常な電圧が得られます。

 

R1~3でR相、S1~3でS相、T1~3でT相 としている

図-1

  図-2

 

電気施工業者は、これらのケーブルの配置などをいろいろと変更し、修正していました。 しかし、太いケーブルであり相当大変な作業のようでした。

 

これらの問題で、2週間ほどの時間的なロスなどが生じてしまいました。 工事契約上、遅延保障なども発生する心配もありました。

東南アジアでは、この様なシングルケーブルによる配電が多く採用されていますので、細心の注意が必要です。

 

技術的に解説されれば、分かるのですが、空調とは分野が違う為、事前に問題が解決される事は少ないようです。

  

たとえ空調設備技術者でも、詳細設計は出来なくとも、おおよその知識を持っていないと、思わぬ不利な状況に陥ります。

 

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