空調は地球の温暖化を促進させる?
トロピカル地域での空調(冷房)は、代替フロンなどを使い電気動力で作った温度差を利用して、空調スペースより吸熱して屋外に排気する方法が一般的です。
従って、空調スペースより吸熱した分に更に熱が加算される為、全体ではどんどん熱が増えてしまいます。
この加算される廃熱量を出来るだけ少なくするため、各メーカーは技術をつぎ込んで効率のよい空調機の開発を行っています。
我々設計・施工関係者も出来るだけ空調負荷の少なくなるスペースを計画したり、過剰な設計を避けるべきだと思いますが実際の工事では、競争力を維持するため、いかにコストの安いものを提供することが最優先にならざるを得ません。
シンガポールでは、赤道直下であるため、特に西面は夜7時位までがりがりの日射があり耐えられない環境になります。
マーケットがこのことを良く知っているため、アーキテクトはこの Western Sun を避けた配置計画を考慮して行います。
しかしながら、それ以外の方位では景観を考えすぎたデザインを重視するため、大きなガラスパネルをふんだんに使うデザインが横行しています(最近特に多い)。
日本では、石油危機依頼温度設定は25~6度が普通と思われますが、シンガポールでは、22~3度が設計の基準になっています。
商用電源も、230Vが普通ですので、容量の大きいエアコンが使えることもエネルギーが増える理由です。
建築の勉強を始めた頃聞かされた話ですが、フランスの有名な建築設計家 コルビジェが学校の設計をした時、生徒が外に気をとられないように、採光は取れるけど外が見えないような教室を作り、非常に不評であったとのことです。
これと同様、熱エネルギーを追求しすぎて人に優しくない空間を作ってしまったのでは、何もなりません。
しかし、常に太陽高度が高い位置にある赤道直下では少しの庇を取り付けるだけで相当の日射を軽減 出来るし、どうしても平面計画上、西面に窓が来る場合、太陽の高度を確かめたルーバーを計画するなどすれば、空調負荷は大幅に軽減出来るでしょう。
「西日を避けるためのルーバーを配置した玄関」
このような詳細の計画をする技術資料は、空調屋さんが建築設計家に提案する位の行動があるべきです。
それには、正確なデータと効果を検証し納得できる提案書を作っておくべきでしょう。
たとえば
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年間・時間別の日射角度を対象地区別に整理する
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外壁面積にたいする窓の面積の比率と空調負荷の比率
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日陰計算が簡単に出来る表
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外壁の色と侵入する熱量の比率
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室温の設定とエネルギー消費 (内部負荷の多い工場などでは影響が少ない、住宅などでは重要)
等の技術データを作っておけば、かなり説得力があると思います。
このHPで紹介している AutoAC プログラムは、これらの資料を作ることも出来る機能を持っています。
空間の設計以外にも、マルチエアコンの屋外機の気流がショートサーキットしないような配置や、屋外機本体が直射日光でボディーが加熱しないようにしたりと泥臭い施工対策の積み重ね が利いてくるのではと思います。
除菌できるフィルター等もメーカーとして良いセールスポイントですが、リモコンに消費電力を金額に換算したメータをつけて使う人に節電を促すなど、地球環境に優しい設計も大事ではないでしょうか。
シンガポールも日本同様、新規建設はほとんどが住宅建設で、産業空調・商業空調などのように技術的に面白みがある仕事が減っています。
泥臭いノウハウの積み重ねが必要です、でもほんとは技術的に中身が濃い(クリンルームや恒温恒湿などの)仕事がしたいのは本音ですが。 06/11/2003
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